電通の過労自殺事件

 電通の過労自殺事件が、大きく報道されています。昨年4月に入社した新卒社員の女性が、長時間労働等のためにうつ病を発症し、昨年12月に社宅から投身自殺したという事件について、労災認定がおりたという事件です。

電通事件

 ご存じの方も多いと思いますが、電通は、平成3年にも過労自殺事件を起こしています。この事件については、遺族が使用者である電通を相手取って損害賠償訴訟を提起し、最高裁まで争っています。最高裁の判決では、使用者である電通には、労働者の健康に配慮して、労働者の疲労や心理的負荷が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうように注意する義務があり、電通はその義務を怠ったとして、電通に損害賠償義務を認めています。
 この事件は、「電通事件」として非常に有名で、労働法の実務に携わっている人なら、誰もが知っている事件です。
 その電通で、またしても過労自殺事件が起こったのです。しかも、新聞報道によれば、2013年にも過労死によって労災認定された社員がいて、昨年8月には労基署から是正勧告も受けていたようです。この報道が本当であるとすると、非常に悪質としか言いようがありません。

命より大切な仕事はない

 労働者の健康の維持管理に責任を負っている、会社経営者や労務担当者は、今回の事件で亡くなった女性社員のお母様の「命より大切な仕事はない。」という言葉の持つ重みを真剣に考えるべきです。
 私も、一昨年、上司に長時間労働を強要され、パワハラも受けていた新入社員が身を投げた事件を受任しています。彼は、命は助かりましたが、一生車いすでの生活を余儀なくされました。労働時間の立証が困難でかなり苦労しましたが、昨年7月に労災認定がおり、現在は会社を相手に損害賠償請求の民事訴訟を行っています。

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