就業規則とは、一言で言えば、職場の規律や労働者の労働条件などについて、使用者が定める規則です。就業規則で定めなければいけない事項は法律で定められており(労働基準法89条)、その範囲はかなり広範です。

以下、その中で特に重要なものを挙げて説明します。

就業規則で定めなければいけない事項

(1)労働時間や休暇・休日等に関する事項

例えば、第1号では、始業・就業の時刻、休憩時間、休日、休暇に関する事項などを挙げています。
始業時刻や就業時刻については、一律で決まっている場合はさほど問題はありませんが、いわゆるシフト制を採用する場合には、シフトを決定する際の基準について定めておく必要があります。
また、所定労働時間は週40時間以内でなければならず、かつ、1日の所定労働時間は8時間以内でなければいけないという原則はよく知られていると思いますが、職場によっては、繁閑期があって、例えば、ある時期については1日の所定労働時間を7時間として、ある時期については10時間にしたいという場合もあります。
この場合、原則としては、週40時間や1日8時間を越えた部分については割増賃金を支払わなければいけませんが、「変形労働時間制」という制度を導入することによって、割増賃金を支払わなくてもよくなる場合があります。
このような「変形労働時間制」を導入する場合にも、それを就業規則に定めておく必要があります。また、「変形労働時間制」を導入する場合には、就業規則の定めの他に、労使協定も必要です。

休日について気をつけなければいけない事項として、育児・介護休業の制度があります。これは、一般に「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(略して「育児・介護休業法」)によって導入が義務づけられている制度ですが、この育児・介護休業は「休日」の一つであると考えられているので、育児・介護休業についても就業規則で定めることが必要です。かなり多くの企業では、「育児・介護休業規程」などという名前の規程を、就業規則とは別個の形で定めていますが、「育児・介護休業規程」も、法律的には、就業規則の一部をなすものです。

(2)賃金について
支給する賃金の種類(基本給や通勤手当、割増賃金など)や、その金額の決定の方法、割増賃金などの具体的な金額の計算方法や支払の方法などについて定める必要があります。賃金は、労働条件の中で最も重要なものですから、正確に定めておく必要があります。
賃金については、ほとんどの企業で、「賃金規程」などという名前の規程を、就業規則とは別個の形で定めていますが、「育児・介護休業規程」と同様、「賃金規程」も、法律的には就業規則の一部をなすものです。

就業規則を作成する場合の注意点

就業規則を作成する場合、最も注意しなければいけないことは、法律に違反せず、かつ、職場の実態を正確に反映していることだと、私は考えています。
法律に違反しないことはもちろんですが、これと同じぐらい、場合によってはそれ以上に、実態に合致しているということが重要だと、私は考えています。
特に、労働時間や割増賃金の計算方法などで、実態と規則の内容が異なっていると、法律上は割増賃金が発生するにもかかわらず、それを支払っていないというようなことになって、何年か経ってから、従業員から、何百万円もの未払い給与(残業手当など)を請求されるという事態が起こる危険性があります。また、懲戒解雇の規定に不備があるために、通常であれば懲戒解雇が妥当な従業員を懲戒解雇できないという事態も考えられます。

経営者の中には、就業規則について安易に考えている人がいます。市販の就業規則の解説書の巻末についている規定例をそのまま使っている人や、他の会社の規則をもらってきて、それをちょっと変えるだけで使っている人など。そのような経営者は、いつ爆発するか分からない爆弾をかかえて企業経営を行っているようなものです。